はちみつ家 > 蜂蜜エッセイ

ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

 

第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

ガラスの器に一杯

松崎ますみ

 

 最近、夫と行動を別にすることが多くなった。彼は平日四日は仕事、土日月はアウトドアの活動を楽しむ。魚釣り、農園作り、トレッキングなど。私は船酔いがひどいし、腰痛もあるので、一緒に行動できない。もともと体の芯に弱いところがあって、この一年は寝たり起きたりである。
 妻としては、週一日ならまだしも、週三日が毎週だとちょっと寂しい。一日も一緒に過ごせない。そんな思いは露知らず、金曜日の夜ともなると、夫は喜々として準備を始める。平日は家事をいろいろやってくれるし、顔色の悪い妻をずっと見ているより、気分転換になるのだから、ここは我慢をしなくてはならない。
 何となくつまらない思いで、近所の本屋さんをぶらぶらして、ある雑誌を見つけた。「朝ごはんのおいしいカフェ」。朝からそんなに遠くへ行けないし、一緒に行く友人もいないし、と思いながら立読みしていると「これなら作れそう」というカフェメニューが載っていた。早速その雑誌を購入した。
 日頃は朝食に目刺しを焼いたり、ぬか漬けを出したりしているので、こんなメニューは私にとって新鮮だった。
 私は大ぶりで銀色の散し模様のガラスの器を取り出した。
 作り方は、ナッツを刻み、器に敷き、上にプルーンを置き、濃厚タイプのヨーグルトをスプーンですくってのせ、二、三種類のフルーツを刻んでのせ、苦みの強いチョコレートを削りかける。最後に蜂蜜をぐるぐるとかける。
 一口食べると爽やかな甘さが広がる。晴々とのんびりした気分になる。
今では作り慣れてきて私は、ナッツはクルミとアーモンド、フルーツはバナナとグリーンキーウィ(緑色がきれい)、そしてヨーグルトはプレーンヨーグルトの上澄みを取って百五十g使うのがお決まりになっている。
 蜂蜜はたっぷり使う。ヨーグルトやキーウィが酸っぱいので、味をまとめるために。美容にも良さそう。そのため、切らさぬよう戸棚に二本常備するようになった。
 夫のいない三日間の朝食が楽しみになった。
 ある日、夫が農園から葉付きの大根をわさわさと持ち帰った。彼はそれで大根おろしを作った。
 「お、蜂蜜があるのか」
 彼は大根おろしの搾り汁をワイングラスに注ぎ、蜂蜜を注いでかきまぜた。
 「栄養があって、おいしいよ」
 と、私に手渡してくれた。
 それがとても嬉しかったから、今度はあのカフェメニューを夫に食べさせてあげたい。

 

(完)

 

蜂蜜エッセイ一覧 =>

 

蜂蜜エッセイ

応募要項 =>

 

ニホンミツバチの蜂蜜

はちみつ家メニュー

鈴木養蜂場 はちみつ家/通販・販売サイト

Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.